フィンペシアはプロペシアのジェネリックのひとつで、プロペシアと同様にフィナステリドを主成分としています。
個人輸入代行業者を利用するとプロペシアよりもリーズナブルに入手できるというメリットがありますが、フィンペシアの服用によって太ってしまったという報告があるのです。太ってしまうのはフィンペシアの副作用なのかどうか、調べてみましょう。
プロペシアの添付文書には記載なし
フィンペシアの副作用については添付文書を調べるのが一番なのですが、国内では販売されていませんので、日本語の添付文書が存在していません。
このため、同じフィナステリドを主成分としているプロペシアの添付文書を基に説明していきましょう。
プロペシアの添付文書によると、臨床試験で副作用が出たのは4%で、性欲の減退やED(勃起障害)が見られたと記載されています。
その他の副作用の項目を見ても、精液の減少や質の低下、乳房肥大、抑鬱症状についてはちゃんと記載されていますが、体重増加や肥満については書かれていないのです。つまり、フィンペシアは少なくとも公式には太る副作用はないということになります。
理論的には太ることはあり得ないのだが…
そもそもプロペシアやフィンペシアの主成分であるフィナステリドは、AGA(男性型脱毛症)や前立腺肥大症の原因であるDHT(ジヒドロテストステロン)が作られないようにするための薬です。
DHTは頭部においてTGF(トランスフォーミング増殖因子)という成長因子の一種であるTGF-βの生成を促します。TGF-βの働きは、毛根付近にある毛母細胞の分裂を妨げ、頭髪の成長を抑制してしまうというものです。
TGF-βの増加によってヘアサイクルが乱れ、まだ抜ける時期になっていないはずの頭髪が抜けてしまう、薄毛が進行するのがAGAなのです。
DHTは男性ホルモンから作られますが、男性ホルモンがDHTになるためには5α-リダクターゼという酵素の働きが必要になります。
フィナステリドはこの5α-リダクターゼの働きを抑えることで、男性ホルモンがDHTになるのを防ぎ、これによって抜け毛を減らし、ヘアサイクルを整えているのです。
このように、フィナステリドには男性ホルモンの分泌量に直接、影響を与えるような効果はないはずなのですが、実は気になるデータがあるのです。
実は男性ホルモン分泌を減少させるリスクあり
米国立生物工学情報センターのデータベースには、フィナステリドの服用によって男性ホルモンの分泌量が減ってしまったという資料があるのです。
資料によると、470人の患者に45カ月にわたってフィナステリドを投与したところ、血中の男性ホルモン濃度が低下していたのです。他の薬ではこのようなことは起きていませんので、明らかにフィナステリドの副作用といっていいでしょう。
なぜこのようなことが起きるのかは完全には解明されていませんが、DHTの生成抑制によって血中の男性ホルモン濃度が上昇することが影響しているという説があります。
男性ホルモン濃度が高ければ睾丸はホルモンの分泌量を減らしますが、男性ホルモンがいつまでたってもDHTにならないため、血中濃度がなかなか下がらないのです。
このため、睾丸がずっと休み続けることになり、そうしているうちに睾丸の機能が衰えてしまうのではないかいうものです。
この男性ホルモンの減少が、肥満に結びついている可能性があるのです。
基礎代謝の低下は太る原因になり得る
男性ホルモンには、体を筋肉質にする働きがあります。ところが、フィンペシアやプロペシアの影響で男性ホルモンの分泌量が低下すると、筋肉がつきにくくなります。
これによって起きてしまうのが、基礎代謝量の低下です。
筋肉が少ないと、同じように体を動かしてもカロリーの消費量が小さくなります。これが基礎代謝量の低下です。食べる量が同じでもカロリーの消費量が減少していますので、太りやすくなってしまいます。
また、運動によって痩せようとしてもカロリーをあまり消費しませんので、なかなか体重が落ちにくくなってしまうというわけです。
現時点ではフィンペシアやプロペシアによって太ったという話については、それ以外の要因によって起きるもので、薬剤の副作用ではないとされてきました。現在でも、公式見解はそうなっています。
ただ、フィンペシアやプロペシアによって男性ホルモンの分泌量が減少することは意外と知られていませんし、気になるデータではあります。今後の研究を注視しておくべきではないでしょうか。
現時点ではフィンペシアに体重増加の副作用があることは、医学的に証明されていません。ただ、フィンペシアに男性ホルモンを減少させる副作用があることは臨床試験で分かっています。
筋肉の減少に伴って基礎代謝量が低下し、体重増加の可能性があることは、注意しておいた方がいいかもしれませんね。